すっかり秋らしくなった朝夕、そこかしこの街角でふいに漂ってくる、
金木犀の香りもそろそろ名残りの頃合を迎えようとしています。
だいたい金木犀の小さな花はその時々の風向きで、どこからともなく突如として目眩がするほどの芳しい香りを届けてくれる名手ではないでしょうか。
満開の枝に顔を近づけて嗅いで見ると、さほど強くはない香りなのに、
風に運ばれた、ソレには強い個性が香ります。
そして、その香りは朝の慌しい出勤の景色にも似合えば、
夕暮れの気ぜわしさの中のうら寂しい光景にも似合います。
はたまた休日の秋晴れの清々しさにも、なぜか相応しく溶け込んで、
その意味で個人的見解においては、香りの原風景的存在感があります。
しかもその香りを色にたとえるならば、決してソフトな淡いものではなく、
むしろ凛とした個性があって、強烈な色調のハッキリしたものといえます。
それでいてなぜか、どんな状況にも違和感なく、自然に溶け込むところが
憎いというか、凄いというか、不思議と感心させられる所以です。
自分らしく振舞おうと思えば思うほど、あちらにもこちらにもぶつかり、
おかげで対人関係がギクシャクした遠い記憶の中で、我関せずのこの香りは
とりわけメランコリー気分の深まるこの季節だからこそ、
得も言われぬ憧れの対象であったのかもしれません。
一般的に人の思惑などに我関せずの御仁はどうもあまり人付き合いが上手くないような誤解を持ちがちですが、実のところ、対人関係を滑らかに紡ぐ技能と独創的個性は決して相反しないということに気付いたのはごくごく最近のことではないかと思い至ります。
自分は自分!何があってもどこにいても!他にはない個性を貫く。
金木犀の香りの中にはそんな<ステキな智恵>のエッセンスがありそうです。
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