時々、接客販売の現場で眉間に縦皺の事態に遭遇します。
概ね、進物などの手配のやり取りの最後に「こちらでけっこうでしょうか?」という言い方が飛び出して、その瞬間、当方の眉間に皺が生まれます。
この言い方をするのがいかにも<アルバイト、学生、未熟>と
3拍子揃っていれば、まったくしょうがないな!と呆れるだけで済みます。
ところが、たとえば老舗デパートのお客様サロンのカウンター越しの
やり取りで、それなりの<妙齢、ベテラン、しかも正社員風情>の
口から出た場合には、間違いなくくっきりと濃い縦皺が刻まれます。
それにしても<けっこう>という日本語は実に使い方が難しいですね。
何かの確認をする場合ならば、「こちらでよろしいでしょうか?」と尋ね、
これに対して、お客の方が「はい、それで結構です」と了解の意向を伝えます。
あるいはお茶のおかわりを問われて、「いいえ、もう結構です」と断ります。
また、「結構なご身分ね」などと言えば、まちがいなく嫌味モード。
さらにはお茶会等で「誠に結構なお点前で」と<見事で有る>とか、
<とても素晴らしい>という意味のほめ言葉にもなります。
さらに相手の好意に対して、傷つけずにお断りしたいときには
「大変、けっこうなお話だとは思いますが」ときちんと認めた上で、
「今回は見送ります」とか「見送らせていただきます」と続けます。
さて、1963年発行の愛用のボロボロの辞書を引いて見ますと、そもそもは<構えを作ること・組み立てること・構え・規模>とありました。
「結構、間に合う」なら、<何とか上手く!>という意味にもなりますが、
これほど柔軟な言葉に向き合うためには、柔軟な姿勢が大いに問われる次第でそれを鍛えるためと考えれば、結構、ラッキーな言葉なのかもしれませんね。
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