2006年10月12日木曜日

可動域のフル活用

ここ数年来、そこかしこで日本古来の歩き方として【なんば歩き】が注目されています。その昔、飛脚はこの歩き方で1日、百キロ以上を歩いたといわれています。この歩き方はご存知のように同じ側の手と足を動かす歩き方で、実に日本人の生活に適した歩き方であったといえます。右手、右足が前に出て、次に左手、左足。実は研修などであらためて日頃の歩き方の点検のため、VTRを撮影しましょう!となると緊張してこの【なんば歩き】になる方が少なからずいらっしゃいます。思わず、ご本人も苦笑いの一場面なのですが、これももしかして日本人ならではのDNAのなせる業かもしれません。

現代歩行法が義務教育の一環として、明治時代の西洋式軍隊の歩行練習からスタートしていることを考えてみれば、歴史的なキャリアは比較するまでもなく【なんば歩き】に傾きます。いわく腰が捻じれない分、着物が乱れないという理に適っていましたし、武士が刀を扱うときも右手、右足が前、そうでなければ振り下ろした刀で自分の左足を傷つける危険性があります。同様に農民が鍬で土を耕すときもこの姿勢。なるほど!と思わず感心してしまいませんか?

さて、私達の身体にある関節にもなるほど!と感心したくなる課題があります。それは関節の可動域です。可動域とはどこまで動かすことが可能かという範囲のことになります。たとえば腕の可動域は手をどの方向に動かすかによっても当然異なります。たとえば、身体の前方に手を上げてゆくと耳の横くらいまで上がります。すなわち180度は動きます。では身体の側面、つまり横に上げてゆくとどうか。この時も、最終は耳の横まであがりますが、腕の可動域は実は横の場合は120度、そこから先は背中にある肩甲骨がグルッと回ることで残り60度を上げられることになります。では、腕を後方に上げてみるとどうでしょうか。かなり柔らかい方でも90度は難しいですね。後ろへは45度あがれば、それが十分な可動域ということになります。ところが歩く練習を実際に行ってみて、手を振りましょう!と言うと、概ね前方にのみ手が出ます。これはどうも【なんば歩き】の名残ではないでしょうか?

そこで正しい歩き方で歩くときに、あらためて肘を中心に腕を後ろに引くと強く意識してみてください。こうすることで胸をはりやすく、自然に背筋が伸びてくる!颯爽とした歩き方のコツは腕の可動域をフル活用した振り方にもあるようです。

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