社会人になりたての頃の私の文字は我ながら実に子供チックな丸文字で、どう贔屓目に見ても上手いといえる状態ではありませんでした。
今だからこそ、話せますが、就活のための<履歴書>もたしか父親に頼んで書いてもらっていたはずです。しかもその字を当時の面接官から「ご自分の字ですか?」と聞かれて、「はい」と躊躇なく答えておりました。ちょっと考えれば、すぐ露見するような愚かな大嘘がよくもと言えたものだと空恐ろしくなりますが、その無分別こそが若さの象徴であったのかもしれません。
しかし、その頃はそんな自覚もなく、文字だけでなく、文章もレイアウトもかなりお粗末で、これは非常にマズイ!とようやく気付くことが出来たのは入社4年め、宣伝部に異動になり、<お便り上手>の先輩に出会えたおかげです。
この先輩の大人びた草書チックな文字と滑らかで清々しい文章、読みやすいレイアウトや封書の宛名書きのバランスの取り方の妙味はどれもみな、歯軋りするほどうらやましい代物で、眼にする度に唸るしかない憧れでした。
そこでこの先輩に頼み込み、先輩の<便箋ファイル>を譲って頂きました。
この意味がわかりにくいかもしれませんが、当時はパソコンもワープロもなくお便りといえば、手書き。その手書きも会社の便箋の場合は、記録保存からカーボン紙を入れて書きながら複写を作成してゆくスタイルでした。
故に便箋1冊には何件かのお便りの記録が保存されていることになります。
以来、何度もその保存便箋のなぞり書きの丸写し、完全盗作でどれほどの方にお便りしたことでしょう。まるで写経みたいな、なつかしい思い出です。
「上手くなりたい!」という思いがあれば、歳月はそれなりの何かを築いてくれると体験を通して実感しています。大切なのは思うこと。
未来のラッキーのための大切な種は<いつかこうなりたい!>と思うこと。
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