2007年1月20日土曜日

お便り上手の妙手

<お便り上手>と聞けば、さぞかし達筆で名文、美文をイメージいたしますが、実際にはそれとは違う評価軸で高得点を弾き出す妙手があります。

それは、いわゆる<心を打つ一言>や<心に響く言葉や表現力>の類であり、そこには上手さよりも温かさとか温もりみたいなものが問われます。

個人的な好みで申せば、やはり<フーテンの寅さん>シリーズで国民的俳優の故・渥美清さんのお便りの話は素敵だなーと素直に思います。
寅さんシリーズといえば、毎回の舞台となる全国各地での撮影が思い浮かびますが、渥美さんはその撮影の旅先から毎日、お母さんにお便りを書かれていたそうです。但し文面は、毎日同じ。ハガキいっぱいに<僕は元気です>
なんとも優しい人柄がしみじみと伝わってくる<お便り上手>です。

また、独特の節回しとテンポに江戸っ子気質が漂う、永六輔さんも間違いなく<お便り上手>のお一人です。以前に<読書のすすめ>の中でご紹介した、金平敬之助さんが一連の著書の中でそのエピソードを紹介しておられました。

詳しい内容は失念しましたが、金平さんが永さん宛てに何某かのお願い事があってお便りをしたところ、すぐにハガキで了承の返事が到着。
そのハガキには<どうぞ、どうぞ>とだけ、書いてあったそうです。ただそれだけなのに、どんな名文句も叶わない温もりがそこにはあったという次第。

額に入れて飾っておきたいような美しい文字や趣向を凝らした文面もたしかに<お便り上手>の本領発揮ではありますが、それとは異なる次元で思わず参ってしまうようなこんな鮮やかな<お便り上手>も見逃すわけにはいきません。

取り分けプライベートな世界では、肩の力を抜いて、心を込めて、そんな視点で<お便り上手>を目指してみるのも一興です。

上手か下手か?という評価軸だけで評価しきれない何かが、そこには確かに存在します。スラスラだけじゃなく、ボソボソやモゴモゴと言葉にならないもどかしい想いを素直に書いてみるのも大いに有りではないでしょうか?

0 件のコメント:

コメントを投稿